岡山の果実 豆知識
2021.9.3
岡山の桃は、多くの品種で収穫が終わろうとしています。
桃の旬は短いのですが、美味しい桃をつくるためには、それまでの作業の積み重ねが欠かせません。
生育状況を見ながら実の数を減らす摘果(てきか)を行い、水分が多くなりすぎないように、地面へシートを敷くこともあります。さらに仕上げの段階になると天候や太陽の光から守るために、全ての桃に袋がけをします。
とある農家の方に聞いた話だと、桃は葉や形など隅々にまで手を加えることも大切ですが、木の全体をイメージして、果物の良さを最大限引き出す大きな流れを意識しているそうです。
なんだか、絵画を描いているような印象を受けました。
しかし、考慮するべきことは生育面だけではありません。
収穫前の成熟した桃は、蛾が大敵となります。
厄介なことに、夜間に活動するため人の手による対策が難しいのです。
そこで使用されるのが、「防蛾灯」と呼ばれるものです。
蛾が夜間に活動し、昼間には動きが鈍くなる特性を利用しています。農園に満遍なく防蛾灯を設置することで、行動を抑制します。
桃に影響を及ぼすことなく、とても実用的な防蛾灯ですが、図らずも農園に美しい光景を生み出しています。
夜になり辺りが暗くなると、桃の農園のあちこちに黄色い明かりが灯りはじめます。
普通の街灯の色とも違い、夜の闇の中に黄色い光が浮かぶ様子は、どこか非現実的な光景です。
防蛾灯が点灯するということは、桃が成長して、収穫が近づいてきたという合図です。
桃の収穫が終わるまでの短い間だけ見られる、夏の農園の風物詩です。
(撮影日は7月中旬)