完成形をイメージし、彫刻のごとく。

産地レポート

2021.6.29

梅雨真っただ中の6月、晴れ間を見てぶどう農園を訪れました。露地栽培のぶどうは順調に成長していました。
花穂(かすい)と呼ばれる小さな粒だったものが、今では一目でぶどうだと分かる大きさにまで成長しています。

ぶどう農園

この時期のぶどうの作業は、摘粒(てきりゅう)と呼ばれるものです。不要な粒を一つ一つ取り除き、全体の房の形を整えます。

傷があるものはもとより、内向きなど、育つ向きが良くないものも落としていきます。
せっかく大きくなりはじめた実を落とすのは心苦しいのですが、そのまま大きくなると粒がお互いにぶつかり、成長を妨げ、皮が裂けることもあります。

ぶどうの粒の数と大きさはトレードオフです。
数が多ければその分楽しめるように思えますが、一つ一つが成長するための空間が狭くなってしまい、大きくなることができません。
さらに、実をつけることができたとしても、それぞれの実に回せる栄養が減ってしまい、美味しくないぶどうになってしまいます。思い切って不要な実を落とすことで、品質の良いぶどうができるのです。

摘粒(てきりゅう)

ただ、適切な粒の数や大きさ、形は品種にもよって異なります。
例えば、ニューピオーネは丸い形をしていますが、シャインマスカットは少し縦長の形になっています。品種ごとに適切な方法を考え、栄養が全体に行きわたるように心掛けているそうです。

シャインマスカット

品種により粒の数に目安はありますが、必ずしも数を意識するわけではなく、理想的な完成の形をイメージして、そのために必要なだけ手を加えるとのこと。
成長を織り込んだ時間的感覚を持って、「完成形」から余分なものだけ削る様子は、ミケランジェロの彫刻技法を彷彿とさせます。

摘粒(てきりゅう)