産地レポート
2024.6.10
初夏になり、「晴れの国」そして「くだもの王国」の岡山では、白桃とぶどうの生育が本格的に始まりました。
5月30日、そんな岡山の農業技術を支える「岡山県農林水産総合センター」を取材しましたので、白桃・ぶどうの気になる生育情報をご紹介します。
今回のテーマは、種です。
まず、岡山県を代表する清水白桃の様子です。
清水白桃は、1本の木に約5,000個もの実をつけます。非常に多いようですが、栄養を集めて実を大きくするために、余分な実を摘み取る摘果(てきか)を行い、最終的に約1,000個まで減らします。
摘果は一度にまとめて行いたくなりますが、清水白桃は自然に落果しやすいため、他の品種では2回のところ、3回に分けて行わなければなりません。摘果するタイミングも考える必要があり、うまく育てるのが難しい品種だそうです。
現在の清水白桃に関する生育や作業について研究員にお尋ねしたところ、「今の時期は、実を刺激しないことが大切で、とにかく触らないようにしています。この時期に刺激すると、核が割れやすくなり、実が健康に育たないのです」と教えてもらいました。
実際に1つの桃を割って中を見せてもらうと、白っぽくて柔らかい「核」がありました。
種はこの核に覆われているのですが、今は内部で形成されている時期なので、核が爪で押しても跡がつかないほど固くなるまで待つことが大切なんだそうです。作業を進めたくなりますが、「急がば回れ」ですね。
今年は、5月の下旬に強雨がありましたが、今のところ順調に生育しているとのことです。
続いてはぶどうの紹介です。最近は、種のないぶどうが普通になってきていますね。ですが、種がないと聞いたのに実際にはあった、という経験はありませんか?
種がなく、大粒でおいしいぶどうを育てるにはどうすればいいのでしょうか。
そんな素朴な疑問を研究員にぶつけてみると、次のように教えてくれました。
「種のないぶどうを作るためには、“ジベレリン処理”を行います。ジベレリンは微生物が作るもので、自然界に普通に存在する安全安心なものです。適切なタイミングで丁寧に行うことで、種のない食べやすいぶどうに育ちます」
そして大きなぶどうを作るには、摘粒(てきりゅう)という作業が欠かせないそうです。
作業の様子を見ていると、ハサミで小さな実を落としているようでした。
「粒を大きくするためには、この時期から早めに粒を間引くこと、そして、健康な樹を育てることが重要です。ただ、大粒にしすぎると、ピオーネでは色が付きにくくなったり、糖度が上がらなくなったりといった他の問題が出てきます。それぞれの品種をよく理解し、ポテンシャルを最大限に引き出すことが大事なのです」
摘粒の前と後を比べてみると、違いは一目瞭然ですね。一粒一粒と手間がかかりますが、大きさや味わいに直結する重要な作業です。
今年のぶどうの生育は、昨年より3日ほど早いようで、結実も良く、これまで順調に生育しているとのことです。
ついに育ち始めた岡山の名物「白桃」と「ぶどう」。これからの成長が楽しみですね。