こだわりや思いの詰まった岡山の桃

産地レポート

2023.9.12

桃の収穫シーズンが終盤を迎えている8月下旬、岡山の農業の研究や技術開発などを担う、岡山県農林水産総合センターを訪れました。

このときの桃は、白皇(はくおう)という品種の収穫が終わり、白露(はくろ)の収穫が行われていました。

袋がけされた白露が実った桃の木

白露は、香りの良さをはじめ、白くて柔らかい果肉に、みずみずしく豊富な果汁が特徴の岡山らしい桃です。
収穫が8月下旬から9月上旬と遅く、時期的にも希少な品種です。
さらに見た目も独特で、果実の先端部分が少しとがっています。

少し下の部分がとがった特徴的な形の白露

写真の桃はまもなく収穫を迎えますが、まだ緑色をしていますね。
というのも、桃は変化が急激で、ものの数日で大きく変わります。
特に収穫の時期は1日も目を離せないほどです。

グレーの袋がかけられた白露

収穫が終わってみればあっという間ですが、生育では毎年さまざまな試行錯誤が行われています。
品質向上のために、細かすぎるほどの工夫があり、袋の色一つをとっても、実験を繰り返して品種ごとに変えているそうです。

そして収穫が終わると、余分な枝を切る剪定(せんてい)が行われ、次のシーズンに向けた準備が始まります。

収穫が終わると木の管理をする

特に枝の剪定はタイミングが重要で、いつ行うかで結果が大きく変わるとのこと。
そして肥料や水をあげて、次の年に実をつける花芽を育てます。

次のシーズンに向けて花芽を育てる

桃は終盤となりましたが、岡山では今年も6月から9月頃までたくさんの品種が登場しました。
多種多様な品種があることで、店頭では個性的な桃を長く楽しめ、農家の方は作業時期や予期せぬ災害などのリスクを分散できます。

とはいえ長い生育は楽な作業ではありません。
桃は、少しでも押されるとすぐに悪くなってしまいますが、特に白桃はその美白のため痛みが目立ちます。品質管理には並々ならぬ努力を注いでおり、出荷時まで細心の注意を欠かしません。

大切に育てられる岡山の桃

ありていに言えば、岡山の桃は、繊細で難しく、育てるのが面倒な品種が多いのです。
一つ一つの作業のタイミングが厳しく、少しズレるだけで駄目になることも。

ただ岡山の農家の方は、普通は諦めるような困難な作業でも、努力と工夫でなんとかしてしまう、そんな気質があるそうです。歴史的にも、清水白桃やマスカット・オブ・アレキサンドリアなど、難しい品種が育てられてきました。

岡山の高品質な果物作りは、農家の方の技術と信念に支えられています。

大きく育っている岡山の桃 白露

さらには、品質の向上はもちろんですが、新しい品種の開発も進められています。
しかし新しい桃を生み出すのは、口で言うほど簡単ではなく、時間も労力も必要な大変な作業です。
期間にするとおよそ15年、スムーズに進んでも12〜13年もの時間がかかります。
一人では不可能なため、多くの人が関わり知識を引き継いで、ようやく新しい品種が生まれるそうです。

岡山ではたくさんの品種が育てられている

「より良いものを作りたい」という、こだわりや、思いが詰まっています。
これからもおいしい岡山の果物をお届けしますので、見かけた際は、ぜひ手に取ってみてください。